特別企画 「創造の旅路」
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創造の道は、一人で歩む孤独な旅のようでありながら、他者や環境、そして自分自身との共鳴を通じて成長していくものです。アートとは、時代や文化、そしてその時その瞬間の感情や思考が形となり、創造者自身が次の一歩を踏み出すための指標でもあります。この「創造の旅路」を進む中で、クリエイターたちは自分の内なる声を探し、他者との関わりを通じて新たなインスピレーションを得ていきます。
Mr. & Mrs. Abeが主催する「Arts & Culture Prize」では、クリエイターたちがその創造の旅路を進み、多様な表現を生み出し、多くの共感を集めました。このコンテストという舞台で、Mr. & Mrs. Abeとクリエイターたちが出会い、共に創作を重ねていく中で、ブランドが象徴する「梅」のモチーフを媒介に「創造の旅」が彩られ、たくさんの素晴らしいアートが生まれました。
今回の特別企画「創造の旅路」では、文芸部門にてプラナスミューメ特別賞受賞者の糸野麦様にアートをテーマにしたエッセイ「その白に、紅梅色の線は走らない」を執筆していただきました。彼女のエッセイでは、十代のころに感じた自分自身と社会との葛藤や、日常に潜む美しさを通じて、創造の旅を描き出しています。心の中の小さな波紋が広がり、感情の複雑な織り成しが、彼女の旅路を通じて、言葉となり、物語となっています。
創造の旅路では、個々のクリエイターが自らの心の声を追い求めながら表現を生み出す姿が描かれます。その過程において他者との出会いや環境との共鳴が次々と生まれ、インスピレーションが連鎖し、次の一歩へと繋がっていく。糸野様の言葉によって表現されたその旅路を、皆様にもぜひ感じていただければ幸いです。
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その白に、紅梅色の線は走らない
糸野 麦(第一回 プラナスミューメ特別賞 受賞者)
いちばんすきな教科はなにかな。
そう大人に聞かれたときに、このひとの頭には最初からコマンドが浮かんでいるな、といつも思っていた。国語、算数、英語、理科、社会。それは、時間が経って問いかけられる言葉の語尾が変わっても、ずっと変わらなかった。小学生のときも、中学生のときも、高校生のときも、それぞれ自分の人生のコマを進めるための試験や面接のときも。
「いちばんすきな教科は、美術です」
そう答えたときに、ほんの一瞬、そうか、という困り顔をする大人の表情が、十代のわたしのこころに傷跡にはならない程度の爪を立てているような気がした。だから、途中からは返答を変えてしまった。
「いちばんすきな教科は、国語です」
美術、ねぇ。と鼻で笑われるのが怖かった。お母さんやお父さんが、そういう学校でてるの?親戚に誰か芸術系の分野で活躍してるひと、いるの?ああいうのって、やっぱり趣味止まりだよね。狭き門だし。ほら、アスリートのひとたちだって周りがサポート万全っていうか、ね。だから、仕事にするとか言い出さないでよね。
考えすぎだと分かっていても、そう悪気なく話す大人がこの世界にいることを簡単に想像できた。ほんとうは、今この目で見ているものや感じていることを、自由に表現することのできる「創作」がいつも穏やかな丸さをして、わたしのそばにいてくれることを知っていたのに。
将来的に役に立つことを、なるべく無駄なく。
確実にお金になることを、若い内から着実に。
大人から与えられる優しさの形をしたそれに、刃などないと頭では分かっているのに、まっすぐ受け取れたことは一度もなかった。そうして、そのまま悩み続けたままで、わたしは学生から大人になった。あのとき感じていた違和感や、やんわりとした圧力は、この世界に変わらず存在しているけれど、それでもなにかをつくることが好きだ、と今ははっきり思う。そして、まっしろな紙に書いた自分の文字の上に、正解不正解の意味をもつ、丸とばつ印のつかない、物語をつむぐことも。
今回賞をいただいた「唇に花」という作品は、十代のこころの痛みと、日常に潜むささやかな美しさ、そして梅の花をテーマにしている。山、海、花、そこで息をする生きものたち。そんな自然をすぐそばに、表現の方法をたくさん探って、今日までも生きてきたような気がしている。だから、そうして生まれた言葉の連なりをこうして評価していただけたことが、とても大きくやさしい一歩になった。
「いちばんすきなことは、物語をつくることです」
梅の花のように気品高く、背筋をしゃんと伸ばして、そう口にできる大人でいられるようにわたしはこれからも咲いていく。
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今回のテーマ「創造の旅路」では、糸野麦様のエッセイを中心に、創造の過程や成長の一部としての旅を描き、その中でクリエイターがどのように自己を見つけ、他者と共鳴しながら作品を生み出していく様子を強調しました。
引き続き、Mr. & Mrs. Abeはこのようなコンテストを通じて、クリエイターたちの創造の旅をサポートし、共鳴の波を広げていくことを目指します。
Mr. & Mrs. Abe