審査員特別賞
HAHAOYA/サタケ コユキ

第二回 Mr. & Mrs. Abe Arts & Culture Prize
審査員特別賞受賞作品
審査員コメント
本作品は、木版リトグラフという技法を用いて、エコー写真のような繊細なイメージを生み出しています。そこに映し出されるのは、母となる前の、あるいは母になりつつある者の姿。曖昧でありながら確かな存在感をもつその造形は、生命の誕生という神秘的な瞬間を捉えながら、同時に「梅」というテーマとも深く響き合っているようです。
梅は、日本文化において不屈の生命力と再生、そして内面からあふれる情熱の象徴ともされます。さらに、木版リトグラフならではの版の重なりや滲みが、梅の花が春先に咲く際の繊細な印象や、生命力を彷彿とさせています。エコーのような表現が、生命の誕生という刹那的で確かな変化の瞬間をより一層引き立て、見る者に多層的な解釈を可能とします。
梅は古来より「再生」や「希望」の象徴とされてきました。本作が表現する母性の芽生えもまた、ひとつの再生であり、新たな命への希望の光である。その意味で、本作品は梅というテーマに対し、本質的でありながら独自の解釈を示した意欲作であるとも言えるでしょう。
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ブランドの問いと哲学
"Be the Origin of Meaning."
この言葉は、Mr. & Mrs. Abe の根幹を成し、創造の道しるべ。
「意味」がブランドや価格、他社や海外の価値基準に委ねられていないか?
私たちが提案するのは、こうした画一的で外部中心の評価軸から脱却し、
「個人の記憶や感情、精神的な共鳴」といった内面に根ざした新しいラグジュアリーのパラダイム。
これは、単に「高価であること」「誰かにすごいと思われること」ではなく、
“なぜそのジュエリーを選び、身に纏うのか”という個人的な理由や物語に価値を置くということ。
Mr. & Mrs. Abe が象徴として選んだのは、「梅」という一輪の花です。
その「たった一輪の花」に徹底的に没入することで、フォーカスを絞りコンセプトに集中しています。
この一点への集中は、ジュエリーにおけるラグジュアリーの再構築そのもの。
多くの選択肢や華やかな装飾ではなく、意味の深さと密度を追求するのです。
これにより、「ラグジュアリー=社会的承認」という古い枠組みを静かに解体し、
「ラグジュアリー=個人の真実」へと書き換えています。
私たちの作品は批評的思考の使者であり、思考と記憶、文化的対話を促すために作られています。
問いかける――「永続とは何か?」「美を所有するとはどういうことか?」
Mr. & Mrs. Abe は単なるブランドではなく、身にまとう哲学である。
地位ではなく文化を、模倣ではなく意味を求める人のために。
他人が定めた序列を追う必要はない。
ジュエリーは単に光を反射する金属ではありません。
それは何を信じ、何を選び取るかという態度の表明です。
Mr. & Mrs. Abe のジュエリーを身につけることは、
問いを生きることを選ぶこと。
問いかけ、挑み、記憶するシンボルと共に歩むことです。
私たちは広告費で「第一想起」を目指すメゾンではありません。
美しさや価値は刷り込まれるものではなく、内から目覚めるものだと信じています。
文化的プレゼンスは数字ではなく記憶に宿ります。
あなたは意味の消費者ではなく、意味の起点です。
価格の序列やブランドのエコーに惑わされず、
あなた自身の問いの深さと感じた確かさを信じてください。
Be the Origin of Meaning.
Mr. & Mrs. Abe