大賞
私たちに流れる血/ゆきめ

第二回 Mr. & Mrs. Abe Arts & Culture Prize
大賞受賞作品
作品講評
本作品は、梅というモチーフに対して新しい視点から挑戦しており、その発想、構想、そして具現化する描写力が極めて高く、第二回の大賞にふさわしいものと評価しました。
作品全体を通じて、『梅』は単なる植物や、一般的な花言葉や象徴性からの着想で終わることなく、作者自身の深い思索を経て、独自の視点から再解釈されています。
作者は、梅を日本人の精神や文化にとって、まるで血液のように内面から流れる根源的な存在として捉え、そこに新たなコンセプトを見出しています。観る者に新たな発見を促すこのアプローチは、まさに本コンテストの目指す「梅のモダナイゼーション」という方向性と一致しています。
また、手首から突き抜けるように咲く梅の花の描写は、ともすればグロテスクな印象を抱かせるかもしれません。しかしその背後には確固たる生命力が息づいており、従来のイメージとは異なる大胆さが感じられます。
一見、リストカットを想起させる構図に映るものの、混乱や自己破壊的な印象は一切なく、むしろ芯の通った力強さが際立っている点も大変興味深い点と言えるでしょう。
全体として、この作品はシンプルな美しさだけでなく、深い意味や強い意志を感じさせる、大変素晴らしい作品と言え、今回の大賞に選出いたしました。